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新宿、午前5時。僕は仕事が好きだった。|ドラッグストア新卒社員の激務と転職

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これは、僕が新卒でドラッグストアに入社し、新宿の店舗で働いていた頃の経験をもとにした物語です。登場する会話や一部の情景は、当時の記憶をもとに再構成しています。


第1章 午前5時、まだ眠っている街

午前5時。

スマートフォンのアラームが、静かな部屋に鳴り響いた。

まだ外は暗い。

布団から片手を伸ばし、画面をタップする。

あと5分。

そう思って目を閉じた瞬間、再びアラームが鳴った。

「……起きるか」

重たい体を起こし、洗面所へ向かう。

鏡に映る自分は、まだ社会人になったばかりの青年だった。

学生時代、僕は英語を専門的に学んでいた。

専門学校を卒業した後は、カナダへ留学した。

慣れない土地、異なる文化、聞き慣れない英語のアクセント。

最初は戸惑うことも多かったが、言葉が通じたときの喜びは格別だった。

英語が話せるようになれば、世界が広がる。

そう信じて勉強してきた。

帰国後、僕が新卒で入社したのはドラッグストアだった。

そして、配属先は新宿。

日本有数の繁華街であり、世界中から観光客が訪れる街だ。

英語を生かして働けるかもしれない。

そんな期待を胸に、僕の社会人生活は始まった。

自宅から新宿までは片道約1時間30分。

店舗の開店は午前9時。

開店準備に間に合うよう、毎朝5時に起きて電車に乗る。

車窓の外には、まだ朝日が昇りきっていない街並みが流れていた。

眠そうな顔をした会社員。

制服姿の学生。

イヤホンをつけて目を閉じる人。

それぞれが、それぞれの一日へ向かっていた。

僕もその一人だった。

まだこの頃は、社会人として働くことに希望を感じていた。

そして何より、新宿という街が好きだった。

第2章 新宿は、僕にとって特別な街だった

新宿駅に到着すると、景色は一変する。

改札を抜ける人々の足音。

地下通路を行き交う大勢の人。

外国語で会話する観光客。

大きなスーツケースを引く旅行者。

朝から活気にあふれた街だった。

僕はこの雰囲気が好きだった。

世界中の人々が集まる新宿は、どこかカナダで過ごした日々を思い出させてくれた。

出勤前、時間に余裕がある日はスターバックスに立ち寄った。

コーヒーの香りが漂う店内。

窓の向こうでは、人々が忙しそうに歩いている。

温かいコーヒーを飲みながら、今日の仕事について考える。

「今日はどんなお客さんが来るんだろう」

そんな小さな期待があった。

ドラッグストアの仕事は、決して楽ではない。

商品の品出し、売場づくり、レジ対応、発注、接客。

やるべきことは山ほどある。

それでも、僕には楽しみがあった。

それが、外国人観光客への接客だった。

第3章 英語が、僕の武器になった

「Excuse me. Do you speak English?」

売場に立っていると、外国人観光客から声をかけられることがあった。

「Yes, how can I help you?」

そう答えると、相手の表情が少し明るくなる。

旅行先で言葉が通じないことは、不安なものだ。

僕自身、カナダで生活していたから、その気持ちはよくわかった。

薬を探している人。

日本の化粧品について知りたい人。

家族へのお土産を探している人。

お客様の話を聞き、必要な商品を案内する。

商品の特徴や使い方を英語で説明し、ときには日本旅行についての質問にも答えた。

ドラッグストアで働いているのに、まるで観光案内所のスタッフになったような気分だった。

もちろん、英語が完璧だったわけではない。

伝えたいことがうまく言葉にならないときもあった。

それでも、相手が理解してくれた瞬間はうれしかった。

「Thank you so much!」

笑顔でお礼を言われる。

たったそれだけで、疲れが少し軽くなった。

学生時代に学んだ英語。

カナダで経験した異文化での生活。

それらが、今こうして仕事に役立っている。

自分が積み重ねてきたものには意味があったのだと感じられた。

また、店舗では推奨商品の販売にも力を入れていた。

お客様の希望を聞き、商品の特徴を伝え、納得して購入していただく。

自分の説明が売上につながることにも、達成感があった。

上司が忙しいときには、外国人のお客様への対応を引き受けることもあった。

自分が誰かの役に立っている。

職場で必要とされている。

その実感が、僕の仕事への意欲を支えていた。

僕は、ドラッグストアの仕事が好きだった。

少なくとも、あの頃の僕はそう思っていた。

第4章 唐揚げ定食と、眠らない街

新宿で働く楽しみは、仕事だけではなかった。

僕にとって、もう一つの大きな楽しみがあった。

それは、外食だった。

新宿には本当にたくさんの飲食店がある。

チェーン店から個人経営の店まで、歩くたびに新しい発見があった。

昼休みになると、僕はよく居酒屋のランチに足を運んだ。

お気に入りは唐揚げ定食。

揚げたての唐揚げに、白いご飯。

味噌汁と小鉢が添えられた、どこにでもありそうな定食だった。

でも、忙しい仕事の合間に食べるその一皿は、格別においしかった。

午前中の疲れを忘れ、午後も頑張ろうと思えた。

仕事が終わった後も、新宿の街には誘惑があった。

行きつけのラーメン屋。

温かい蕎麦を食べられる店。

ときには、バーに立ち寄ることもあった。

新宿は、夜になっても明るかった。

ネオンが光り、飲食店には人が集まり、駅前では大勢の人が行き交っていた。

一日中働いて疲れているはずなのに、その景色を眺めていると、不思議と気持ちが高揚した。

社会人になった。

自分で働いて稼いだお金で、好きなものを食べる。

学生時代にはなかった自由が、そこにはあった。

僕にとって新宿は、仕事の場所であると同時に、青春を過ごした街でもあった。

ただ、その楽しさの裏側で、少しずつ無理が積み重なっていた。

第5章 午後10時、新宿はまだ明るい

ドラッグストアの閉店は午後10時。

閉店作業が終わる頃には、時計の針が10時を回っていることも珍しくなかった。

そこから電車に乗り、自宅へ帰る。

片道約1時間30分。

家に着く頃には、午後11時30分を過ぎていた。

玄関のドアを開ける。

靴を脱ぐ。

鞄を置く。

ようやく一日が終わった。

けれど、翌朝も5時に起きなければならない。

シャワーを浴び、翌日の準備をしていると、あっという間に日付が変わりそうになる。

そして、また朝が来る。

人身事故で電車が止まることもあった。

ホームには人があふれ、電光掲示板には運転見合わせの文字が並ぶ。

スマートフォンで運行情報を確認しても、再開の見通しはわからない。

ただ、待つしかなかった。

そんな日は、帰宅が日付をまたぐこともあった。

朝5時に起きて、新宿で働き、深夜に帰宅する。

翌日もまた仕事。

今振り返ると、よく続けていたと思う。

当時はそれが当たり前になっていた。

社会人なのだから仕方がない。

新卒なのだから頑張らなければならない。

そんなふうに、自分に言い聞かせていた。

しかし、体は正直だった。

第6章 眠れない夜が増えていった

不規則なシフト勤務が続くうちに、僕の生活リズムは少しずつ崩れていった。

早い時間から働く日もあれば、閉店まで働く日もある。

帰宅時間も、眠る時間も一定ではない。

疲れているのに、眠れない。

布団に入っても頭が冴えてしまう。

時計を見る。

もう午前1時。

もう午前2時。

「あと何時間眠れるんだろう」

そう考えるほど、焦りが大きくなっていく。

眠らなければいけない。

明日も仕事がある。

でも、眠れない。

その繰り返しだった。

やがて、睡眠の問題は仕事にも影響するようになった。

以前なら簡単にできていた作業でミスをする。

集中しようとしても、頭がうまく働かない。

一つの作業を終えるだけでも、以前より疲れるようになった。

そして何より、自分の感情をコントロールすることが難しくなっていった。

第7章 好きだった仕事が、苦しくなった

些細なことでイライラするようになった。

以前なら気にしなかったことにも、腹が立つ。

上司から注意される。

頭では、自分に改善すべき点があることもわかっている。

それなのに、素直に受け止められない。

感情が先に出てしまう。

上司と言い争いになることもあった。

後になって冷静になると、どうしてあんな言い方をしてしまったのだろうと思う。

でも、その場では抑えられなかった。

仕事でミスをする。

注意される。

イライラする。

さらに集中できなくなる。

そんな悪循環に陥っていた。

体調が悪くなり、途中で早退することもあった。

以前は外国人観光客と英語で会話するだけで楽しかった。

上司をサポートできることもうれしかった。

でも、次第にその楽しさを感じる余裕がなくなっていった。

仕事そのものが嫌いになったわけではない。

むしろ、好きな部分はたくさんあった。

それなのに、働くことが苦しくなっていた。

この矛盾が、僕を悩ませた。

「こんなはずじゃなかったのに」

学生時代に思い描いていた社会人生活。

英語を生かし、いろいろな人と出会い、自分の可能性を広げていく。

そんな未来を想像していた。

実際、新宿での仕事にはやりがいがあった。

ただ、生活のすべてを仕事に合わせ続けることは、僕にとって簡単ではなかった。

第8章 仕事の疲れは、私生活にもついてきた

仕事が終われば、気持ちを切り替えられる。

以前はそう思っていた。

でも、疲れが積み重なると、仕事と私生活の境界が曖昧になっていく。

休日なのに、気持ちが休まらない。

明日の仕事を考えて憂うつになる。

眠りたいのに眠れない。

何もしていないのに疲れている。

恋愛もうまくいかなくなっていた。

心に余裕がないと、相手の言葉を落ち着いて受け止めることも難しくなる。

自分の気持ちや欲求を抑えられず、感情が表に出てしまうこともあった。

本当は、もっと穏やかに過ごしたかった。

仕事も恋愛も、どちらも大切にしたかった。

でも、思うようにいかなかった。

心身の不調がすべて勤務のせいだったと断言することはできない。

当時は、仕事以外にもさまざまな悩みがあった。

それでも、睡眠が足りず、生活リズムが乱れていたことは、僕の心の余裕を奪う大きな要因だったと感じている。

朝のスターバックス。

昼の唐揚げ定食。

仕事帰りのラーメン。

あれほど楽しかった新宿での日常も、少しずつ色あせていった。

新宿の街は、何も変わっていなかった。

相変わらず人が多く、店はにぎわい、夜になっても明るい。

変わってしまったのは、僕の方だった。

第9章 僕は、このまま働き続けられるのだろうか

あるとき、ふと考えた。

「この生活を、あと何年続けられるんだろう」

新卒で入社した会社。

英語を使える職場。

外国人観光客の役に立てる仕事。

自分にとって魅力的な要素は、確かにあった。

けれど、好きな仕事だからといって、どんな働き方でも続けられるわけではない。

仕事のやりがいと、自分の健康。

どちらか一方を選ばなければならないのだろうか。

以前の僕なら、もっと頑張ろうと考えたかもしれない。

でも、すでに体調を崩していた。

仕事でのミスも増え、人間関係にも影響が出ていた。

このまま無理を続けることが、本当に正しいのだろうか。

そんな疑問が、頭から離れなくなった。

そして、僕は転職活動を始めることにした。

条件は、以前とは少し違っていた。

英語を使えること。

やりがいがあること。

もちろん、それらも大切だった。

でも、それ以上に重視したいものがあった。

生活リズムを整えられること。

不規則なシフトではなく、できるだけ決まった時間に働ける仕事。

きちんと眠り、体調を整えながら続けられる仕事。

以前なら、それほど重要だと思っていなかった条件だった。

求人情報を眺めながら、僕は初めて気づいた。

仕事を選ぶということは、仕事内容だけを選ぶことではない。

自分がどんな生活を送りたいのか。

どんな毎日を過ごしたいのか。

その選択でもあるのだと。

最終章 新宿、午前5時。僕は仕事が好きだった。

今でも、新宿という街には特別な思いがある。

朝のスターバックス。

昼休みに食べた唐揚げ定食。

外国人観光客との英語での会話。

仕事終わりのラーメン。

夜遅くまで明るかった街並み。

思い返すと、楽しかったこともたくさんある。

もちろん、つらかったことも忘れていない。

睡眠不足。

仕事でのミス。

上司との衝突。

心身の不調。

それらも含めて、僕の社会人としての原点だった。

もし、あの頃の自分に声をかけられるなら、何と言うだろう。

「もっと頑張れ」とは言わないと思う。

「仕事が好きなら、もう少し我慢しろ」とも言わない。

きっと、こう伝える。

「仕事を頑張るのはいい。でも、自分の体まで犠牲にしなくていいんだよ」

社会人になると、頑張ることが当たり前になる。

疲れていても出勤する。

眠くても仕事をする。

多少の不調なら我慢する。

そうやって責任を果たそうとする人は、きっと多いと思う。

でも、健康を失ってしまえば、好きだった仕事さえ楽しめなくなることがある。

僕はそれを、新宿での生活を通して学んだ。

あの頃の僕は、毎朝5時に起きていた。

眠い目をこすりながら、1時間30分かけて新宿へ向かった。

仕事が終わる頃には、街はネオンに包まれていた。

そんな毎日だった。

それでも、確かに仕事が好きだった。

だからこそ、今でも思う。

仕事を好きでいられる働き方を、もっと大切にすればよかった。

新宿、午前5時。

あの頃の僕は、まだそのことを知らなかった。


あとがき|ドラッグストア勤務はきつい?元店員として思うこと

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

今回は、僕が新卒でドラッグストアに入社し、新宿で働いていた頃の経験を小説風に書いてみました。

ドラッグストアの仕事は、接客や医薬品の知識を生かせる、やりがいのある仕事です。

僕自身、英語で外国人観光客をサポートできた経験は、今でも大切な思い出です。

ただし、店舗によっては営業時間が長く、不規則なシフト勤務や遅番・早番への対応が必要になります。

僕の場合は、片道1時間30分の通勤も重なり、生活リズムを維持することが難しくなりました。

もちろん、すべてのドラッグストアが同じ労働環境というわけではありません。

勤務時間、通勤距離、人員配置、職場の雰囲気などによって、働きやすさは大きく変わります。

もし現在、ドラッグストアで働いていて、仕事は好きなのに体調を崩しているという方がいたら、伝えたいことがあります。

仕事が好きなことと、その働き方を続けられることは別です。

転職だけでなく、勤務時間の調整や異動の相談など、選択肢は一つではありません。

自分の健康や生活を大切にすることも、長く働くためには必要な判断だと思います。

国家資格キャリアコンサルタントとなった今、当時の経験を振り返ると、働き方を見直すことも立派なキャリア選択だったのだと感じています。

皆さんは、仕事のやりがいと働きやすさ、どちらを大切にしていますか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

普段はキャリアコンサルタントとしても活動しております。

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